春寒本家に連絡をして、救援を要請したは良いが、春寒の滑走路まではどうにか移動しなければいけない。
高校が滑走路まで一番近い場所というわけではなかったが、下手に転移して連中に遭遇するのも怖いので、徒歩で行くことにした。普段通らない道なら奴らが張ってる可能性も低い。
先頭は道がわかる氷河、真ん中に波久倍くんを挟んで殿に雷というなんとも会話しづらい陣形で行くことになった。
この辺は中層マンションの立ち並ぶ住宅街で、そこを抜けたあたりに春寒の滑走路があるらしい。騒音とか大丈夫なのかと雷は気になったが、そう頻繁に使われているわけではないのと、そもそも近くのマンションは春寒が所有しているので無問題だとかなんとか……
「そういえば、珍しい能力者でも開発研究所に協力してるとは限らないんだな」
「うーん、僕たちみたいなのって多分生まれた時から能力があるわけじゃないから、出生時の能力検査した時に判定されなかったらそうなることもあるんじゃないですかね。僕の場合は、お母さんを近所のスーパーまで連れて行ってしまったから発覚して後から能力検査に連れていかれましたけど、未登録の能力者は結構いるみたいですし」
「へーえ」
「能力で何ができるのかって自分でもよくわからないままのことも多いから、本当は専門家と相談したほうがいいと思うんですけど……」
「ネビュラとかいうのはどこで自分の能力の使い方を知ったんだろうな。あの連中ももしかするとそういうのに詳しい人が内部にいるのか――てか呼び方ないと不便だな」
「——、——」
「え? 何? ひょーがくん!」
雷のスマホから通知音がした。
「あぁ、メッセージで送られてきた……」
『今、波久倍くんの両親に聞いたらそれっぽい営業の人は何度も来ていたが、居留守を使って無視していたらそのうち来なくなった、とのこと。話を聞いていないから結局団体名は不明』
「あー、何度も来てたって言ってたもんな。というかご両親は無事なの?」
『お前は普通に喋るんかい。聞こえるけど聞こえにくいんだわ。ご両親は普通に保安検査場通過したらしいよ。春寒なら安心だってさ』
「文字打つのめんどいんだよなー。波久倍くん、伝言ゲームしない?」
「穂天先輩が伝言ゲームしない? だそうです」
『なんでそうなるんだよ』
「ごめん伝えてほしいのそこじゃないんだけど……」
しょうもない会話をしながらしばらく歩いていたが、連中がいる気配はなかった。
「うーんやっぱり普段の行動圏外にはあいつらはいないんだな。まあ、さっきまでのことを考えるとつけられててふいうちされる可能性もあるが……」
『少なくとも春寒の敷地内についてしまえば常駐してる警備員もいるし、安全だよ』
「で、その敷地まではあとどれくらいだ?」
『あと10分くらい歩けばつくんじゃないかな〜』
そうこうしていると少し開けた場所が見えてきた。
「そう、あそこの柵の向こうが――」
氷河が指さした瞬間、細かい岩が飛んできた。
「あぶな?!」
2人はとっさにバリアで防ぐ。
「遅かったな戦闘術者たち」
岩が飛んできた方から人影が現れる。
「カルロッタ……?!」
カルロッタだけではない。ネビュラも、他の戦闘部らしき人間たちもいる。
後ろを振り向くと、後ろにも戦闘部らしき人間が道を塞いでいた。
「お前らは空港にいたんじゃ……」
「頑張って移動してきたんだよ〜ん」
ネビュラが軽く言う。
カルロッタたちはネビュラの時間停止能力を利用しながらなんとか移動してきたようだ。時間停止中に長距離移動すれば傍から見たら瞬間移動と同じように見える。
「春寒の人間がいるし、あそこでネビュラを警戒して速攻転移する選択をする人間は、多分、このルートを選ぶだろうとあの人がな」
「あの人?」
カルロッタは答えなかった。
「ともかく……だ。ほかの滑走路に向かう道もうちのメンバーが塞いでいる。お前らが察している通り、ここから転移してもほかの組織メンバーが待ち伏せしている。波久倍慎はここから滑走路内には転移できない。どうする? 戦闘術者」
「時間停止したから助けもこないよ〜」
ネビュラは良い笑顔で行った。
「……どうする、雷」
雷は思案した。
実力だけで勝負すれば間違いなくあの2人には勝てないだろう。だが、ネビュラは長時間の能力使用と移動で疲弊しているはずだ。もし2人を倒せないとしても、この包囲をどうにか突破して滑走路の敷地にさえ入ってしまえばさすがに追ってこられはしないだろう。
「……やるしかない、か」
「了解」
