「――で、結局あいつらは何者だったんだろうな?」
高校の屋上。雷の問いに、数学の試験で爆死して死んだ顔をしている氷河が口を開く。ちなみに雷は普通に試験を通過しており、なお氷河の顔は死んだ。
「あー……春寒から色々聞いたけど……」
「けど? まさか春寒家も認識してない?」
「いや。認識はしてる。えーと……」
氷河は本家から聞いてきた情報を思い起こす。
約5年前から活動が確認されており、比較的最近にできた団体と思われる。なんでも屋のようなことをやっているようだが、それ以外の実態は不明。春寒は便宜上”組織”と呼んでいる。
「最近という割にはだいぶ人がいそうな団体だったが」
「俺もそれは思ってな。母体となった団体があるか、どっか権力者とかがバックにいるんじゃないかって聞いたがノーコメントだったな。本家は何か掴んでそうだが……」
「まさか春寒が黒幕とか?」
「まさか! そんなことがあったら俺は人が信じられなくなる」
氷河は顔をしかめた。
「まあ、暗に関わるなってことだろうな。波久倍くんの能力が使えなかったらどうなってたかわからないし……」
「あれは危うかったな〜」
実際のところは雷の予想通りだった。波久倍くんは普通にマンションの屋上に転移することができ、その後そのまま滑走路に飛んだ。
波久倍くんは不法侵入を気にしていたが、緊急事態だったのと、マンションは春寒の所有だったため特に何かを言われることはなかった。
組織は春寒の滑走路に侵入してはこなかった。氷河の予想通り、春寒を敵に回したくはないようだ。
「まあでも、波久倍くんは無事西についてご両親と合流したらしいし、いいだろ」
「それはそうだな」
雷が知る限り、波久倍くんが引っ越していったところは能力者がたくさん住んでいたはずだから、彼が自分の能力対する理解を深めることを助ける機会が今より多く得られるかもしれない。
「それにしても、組織ね……」
そう呟いた雷を見て氷河は思った。
おそらく一般的な戦闘術者の手に負える代物じゃないだろうから春寒も最低限しか教えてくれないんだろうが……、雷は関わるなと言われたものには関わりに行くタイプだ。
それになんとなく、今後雷と一緒に戦闘術者を続けるなら、きっとどこかでやつらにまた会うことになる気がする。
「……そういや氷河くん、追試か」
「急に話変わりすぎだろ」
そう、数学の試験に落ちた氷河はまずなにより追試に向けて勉強しなければならないのだ。
「うーん……こまめに勉強するタイプの氷河くんが1日勉強できなかっただけで差が出るとは思えないから、数学の試験はどっちにしろ落ちてたよ。だからあんまり気にしなくて良いんじゃないかな」
「それ、まったく慰めになってないからな」
