「何者かに、つけられている」
「そうなんです」
首都東区某高校の2-B教室。穂天雷は依頼人と向かい合って座っていた。
探偵部は非公認部活で、部室を持ってないので適当な教室を勝手に間借りしている。もちろんだめなのだが、この高校には先生も把握しきれないくらいクラブがあるので、黙認状態である。どうしてそんな事になっているかと言うと、理事長が「生徒の積極的な課外活動を妨害するわけにはいかないからねぇ」とか適当なことを抜かすため、クラブの申請を取り下げにくいからである。「でも理事長はこう言ってましたよね?!」といえば先生も受け取らざるを得ない。
そんなわけで雷も腐れ縁の春寒氷河と一緒に探偵部というクラブを1年生の頃にたてた。部員は途中で1人増えて3人で、顧問はいない弱小クラブなため一生教室はあたらない。
探偵部は基本的に雷が興味を持った適当な事件に首を突っ込んで荒ら……ではなく解決するのが主だが、もちろん人からの依頼も受け付けている。
今日の依頼人は、1年生の生徒で、波久倍(はくべ)と名乗った。
「最近、何者かにつけられている気がするんです」
彼は公認の運動部に入っており帰宅が遅くなることも多いという。友人と別れて一人で帰路についていると、どうもなんだか気配を感じるようになったらしい。
「今のところ実害はないんですけど不気味で……家の前に足跡があったこともあったし」
「そりゃ怖いな」
「穂天先輩は戦闘術者なんですよね? 他の戦闘術者は依頼料高くて……調査してもらうことはできますか?」
「うーん……昼飯1週間分」
「おい雷、後輩からたかるな」
ガラガラ、と音をたてて教室の扉が開いて、春寒氷河が入ってきた。

「氷河くん、タダ働きはちょっと……」
「そこの君、このケチに頼むよりちゃんと警察行ったほうが良いよそういうのは」
「実害がないから、動いてくれなくて……」
「役に立たん組織だな、何のために税金を払っているのやら」
「俺たちはまだそんなに払ってないだろ」
「家の前の足跡とか、証拠にならなかったのか」
「誰かが家の敷地ギリギリを通り過ぎただけだろうって」
「や、役に立たね〜〜!」
家の敷地ギリギリを通り過ぎるだけで十分不審者だろうが!
「かわいそうだから、昼飯3日分でどうだ」
「だーからたかるなって。10円の駄菓子1個とかでいいよ」
「氷河くん!?」
「この人そんなにお金ないんですか……?」
「コイツが財布持ち歩くのをサボってるだけだよ」
波久倍くんは内心(この人たちに依頼して大丈夫だったか……?)という気持ちになった。
