「さて……」
捕縛したナーデルを6人で囲んで見下ろす。
「これからもう一人の主催者のところに行くとして……この子はどうする?」
「もう一人の主催者を倒した後、2人並べて事情聴取と行こうぜ」
「じゃあどうにか連れていくとして……」
ナーデルは雷たちの方を見て睨みつけながら言った。
「お前らはアリーナには勝てない」
「もう一人はアリーナというのか」
「無駄なことは……」
突然、ナーデルは電池が切れたように黙って俯いた。
「なんだ?」
「気絶した?」
「そんな強い攻撃当てましたっけ?」
首を傾げる術者たち。
「おい穂天雷〜?」
「なんで私のせいなんだよ冴代文珠」
「この拘束術に不備があるんじゃないか?」
「そんなわけないだろ、君こそ得意のデバフ術が漏れてるんじゃないのか」
「そんなわけないだろ!」
「意味不明なことで口論しない……」
今日は仲裁ばっかりしてるな……と氷河は思った。
それはそれとして、気絶した人間をいつまでも縛るのはかわいそうなので雷に術を解くように進言する。
さっきの戦闘を見るに、もし気絶したフリだったとしてもすぐにつかまえられるだろう。
ところが、拘束を外してもナーデルはぐったりしたままで動かない。
「え? 死んだ?」
流石の雷もちょっと動揺する。
「いや、心臓は動いているし呼吸もある」
「う〜ん、これは仕事を中断して救急でも呼んだほうがいいんじゃないですか?」
「そこまでかなぁ?」
「というか、ちょっと戦っただけでこうなるってずいぶん虚弱というか……」
瞬間、頂上方向から鋭いかまいたちのような攻撃が雷たちのところにとんできた。ナーデルの対応に頭を悩ませていて気配に気づかなかった雷たちはもろに攻撃をくらう。いや、シキョウだけは先に気づいてまた避難していた。そこは教えろよ、と雷は心の中で毒づいた。
攻撃の主は肩までの銀髪に、ナーデルと傾向の同じような系統の黒ずくめの服。なぜか身長と同じくらいの大きさのカマを持っている。誰がどこから見てもナーデルの仲間で、宝探し大会の主催者の一人だ。
「ナーデルに触るな」
「あんたが……アリーナか?」
「その前にナーデルを渡せ」
要望に応えないと何も答えてくれなさそう雰囲気である。ナーデルをそのまま保護していてもどうしようもないので、素直に従うことにした。
アリーナは飛行術で雷たちの近くまで飛んできて着地し、ナーデルを抱き上げる。
「最初から私が出ていけばナーデルも私も消耗せずに済んだな……」
小さく呟いたあと、雷たちの方に向き合う。
「なぜ私たちの邪魔をする? あなたがたに迷惑をかけたか?」
氷河が答える。
「そこの梟族の方から依頼があったんだが、普段人がうろつかないところをうろつかれて、うるさくて眠れないらしい」
「今までの大会でそんな苦情が来たことがなかったが……そうか、それは申し訳ないな。今回の大会はもう切り上げるから放っておいてくれないか」
「それはできない!」
文珠が声を上げる。
「お前らは組織と関わりがあるんだろう?! 何を企んでるのかは知らないが……」
「は? 何だ、それは」
「そうやって誤魔化そうとしても無駄だぞ、そういう情報があるんだからな」
「……だから組織とはなんなんだ」
アリーナは怪訝な顔をする。
「本当に組織が関係ないなら、春寒大河の情報が間違っていて冴代文珠が無駄に首都出張することになっただけなわけだが」
雷が口を開く。
「それはそれとして宝探し大会の目的を教えてくれないと私は帰れないなぁ。あと、さっきの糸の術のからくりとか! 翌日まで持続する術とか……後ろ暗いことがないなら話せるだろう?」
はぁ……とアリーナはため息をつく。
「現代人なのにプライバシーという言葉を知らないの? それをあなたたちに話しても私は得をしない。それよりも早くナーデルを回復させなければならない」
「話す気がないなら組織の関係者とみなして力づくで情報を聞き出すしかないなぁ」
雷は手に電気を纏わせる。
「無理な勝負はやめたほうがいい」
「何がだ? こっちの方が人数が多い」
「そうじゃない。あなたたちは消耗しているはず」
「さっきの糸のせいで? だがもう糸はないぞ」
「あなたは誤解をしているようね。あれはナーデルの能力ではない。距離が離れていたから糸を触媒にしていただけ」
アリーナはカマの先を雷の方に向けた。
「何だ?」
「距離が近ければ何の問題もない」
次の瞬間、雷は膝から崩れ落ちた。
「は?!」
「雷大丈夫か?!」
「さっき糸に巻きつかれた時より強力だ……全く立ち上がれない。なにをしたんだ?」
「あなたの生命エネルギーを吸った。加減しなければ殺すこともできる。無駄な戦いという意味がわかった?」
いくらあと3人いるにしても、さすがにこれで勝ち目が薄い。全員で山の中で動けなくなる方がまずい。
「俺は、ここで引いた方がいいと思うが、冴代文珠は」
「組織関係者だとしたら逃したくはないが……」
「俺も無駄な戦いは避けたほうがいいと思いますけどね」
「はぁ……僕だけで勝てると思うほど自惚れてはないな」
文珠は悔しそうな顔をした。珍しく素直だなと氷河は思った。
「私の意見は?」
「雷はそもそも動けないだろうが!」
「ちぇっ」
「懸命だな」
アリーナはナーデルを片手で抱えたまま飛行術で浮き上がる。
「これ以上、私に関わらない方がいい。……宝探し大会は終わりだ」
そう言い残し、アリーナたちは藪の中に消え去った。

