宝探し大会

「そういえば……そこの梟、情報をくれるとか言っていた気がするんだが何も聞いてないぞ」
「なんだ、緑の人間、私には名前というものがあってだな」
「あ?」
「あ?」
「なんで普通に会話ができないんだよお前らは」

氷河が雷とシキョウの間に入る。

「もう俺がシキョウさんと会話したほうがいいんじゃないか?」
「なるほど、穂天雷だけでは会話が成り立たないから2人で事務所をやってるんだな」

後ろで雷が拳を握る音が聞こえた。やめとけやめとけ。

「で、何が知りたい?」
「何がというか……知ってることは全部教えてもらえると助かるな。でないと主催を倒すこともできないぞ」
「う〜んそうだな。主催側の人間はとりあえず2人いるようだな。片方は受付をしているやつで、もう片方は頂上にいる」
「思っていたよりかなり規模が小さいんだな? 組織は人手が足りないのか?」
「組織がどうとかは知らんが……まあ見える範囲にはそれしかいないということだ」

受付にいたのといえば黒ずくめのコスプレみたいな服を着た子供だ。

「情報量がないな。頂上に本部があるというからそりゃ人がいるだろうし」

雷が眉間に皺を寄せながら言った。

「は〜? 文句を言うな。私は戦闘術者じゃないんだからそんな色々調べ回ったりしてないんだよ」
「やっぱり依頼料を取るようにして正解だったな。こんなんじゃ対価にならない」
「はぁ……まあ強いて言うなら日没後はさっさと撤収してるらしいから、急げってことくらいかな」
「そりゃ制限時間は夜になるまでって言ってるから撤収するだろうな」
「だからそこ喧嘩になるんだから会話するな」

頂上の方に向かって歩いていたら向こう側から人影が現れた。

「お? 参加者……じゃあないな」

さっきまで話題に上がっていた受付の子供だった。

「なんでこんなところに?」
「もう参加者募集終わったんじゃないか?」
「にしては明確にこっちに向かって来ますけど」
「呑気にしてる場合じゃないと思うぞ人間ども〜」

困惑する雷たちにシキョウが声をかけた。なぜか少し離れた木の上にいる。

「なんであんな遠くにいるんだあいつ」
「だってそいつ敵意剥き出しじゃないか」
「え?」

突然地上の5人の間に針が飛んできた。受付の子供が持っていた謎の針だ。

「うわっあぶな!」

術者4人は左右に分かれて避ける。

「待て、俺たちはいいけど真夏さんは戦闘ができ――」
「なんですか?」

氷河は慌てて振り向いたが真夏は無事だった。針が飛んできた時真後ろにいたはずなのだが。

「いや〜、叶さんの写真が風で飛んでいきかけて……何かあったんですか?」

ちょうど地面に落ちた写真を拾っていたため針に当たらなかったらしい……

「こ、これが運がいいということか……」
「なんで俺の写真なんて持って歩いてんですか?! とりあえず危ないので離れててください」

真夏はシキョウのいる木の方に避難した。

そうこうしている間に受付は当たらなかった針を引き寄せる。念術というよりも針の穴に見えない糸が通っているようだった。

「これは戦うしかないかな、氷河くん」
「子供とはなるべく戦いたくないんだがな……」
「子供ではない。お前たちよりは長く生きている」

受付はまた針を投げた。針は雷の周囲を回転し、雷は身体を糸に縛られたような感覚がした。身体を動かして振り払おうとしたがうまく身体が動かない。

「なんだ?」
「お前が気絶する前に私のことを教えてあげよう」
「なんで気絶する前提なんだ……?」
「私はナーデル。この大会の間ずっとお前たちを見ていた」
「どうやって?」
「私はこの針と糸で『様々なものを縫い付けることができる』。参加者全員の背中には私の糸が縫い付けてある」
「だから受付にいたのか」

雷は山に入った直後に背中に変な感覚を感じたのを思い出した。ナーデルの仕業だったのだ。

「宝を探すならまとまって探すのは効率が悪い。だからバラバラに縫った5人が纏まって行動しだしたのは不審だった」

本当はシキョウもいるが、こいつは参加者ではない。

「したがって私はお前たちの糸を私の耳に縫った」
「要は私たちの会話は筒抜け……と」
「我々に害をなす可能性があるならさっさと排除する越したことがない」

その時、文珠が雷に術をぶつけた。いつものデバフ術ではなく、簡単な斬撃である。

「何するんだ冴代m……あ、動ける」
「助けてやったのになーんだその顔は。お前こんな糸も切れないのか? 見えないとはいえ術由来のものならこっちの術ですぐ解けるだろうに」
「なーんかあの糸に縛られていた時妙な感覚がしてな……どうも力が抜けていくような」

雷は宝探し大会に参加した後疲労感に襲われて動けなくなったという報告があったのを思い出した。この糸のせいだったのか。

「……たしかに僕も普段より消耗が激しい気がするな」
「それは俺に無駄な喧嘩をふっかけていたからですよね?」
「……」

文珠には返す言葉がない。

「お前ら敵の眼前でお喋りしていていいのか?」

ナーデルはまた針を飛ばした。

「どっちにしろ糸を結ばれなければどうってことないんですよね?」

叶が針の根元に術を飛ばして糸ごと針を吹き飛ばす。

「あ」

ナーデルは針を慌てて針を拾いに向かう。

その隙しかない姿をみて術者たちは確信した。ナーデルは何かしらの術、あるいは能力を持ってはいるがそれ以外の攻撃手段がなく、戦闘には長けていない。
冴代文珠が念術で針をさらに遠くに飛ばす。氷河がナーデルに吹雪(出力抑えめ)を当てて怯ませる。その隙に後ろに回り込んだ雷が電気でバインドする。仲が良くなくてもこの辺の意思疎通が無言でできるあたり流石である。

「お〜手際がいいな」

見ていたシキョウが手(?)を叩いた。