宝探し大会

「お、人だ」

雷たち一行が叶を探して歩いていると頭上から声が聞こえてきた。

「なんだ?」

上を見上げると木の枝の上に器用に立っている人物がいた。

「人間――ではなさそうだな」
「正解だよ緑の。私はシキョウ、誇り高き梟族だ」
「はぁ……ご丁寧にどうも。この山って梟族住んでたんだな……」

半獣人と呼ばれる動物の特徴を備えた人型の生き物たちのうち、鳥系の種族は人間社会での生活に適さない形状の部位がある個体も多いので、望円国内ではあまり見かけない。たいてい鳥族同士でコミュニティを作って人がほとんど通らないところで暮らしている。

「お前たちも宝探し大会の参加者か?」
「そうだが……宝探し大会って半獣人も参加できるんだな」
「まさか! 私は参加者じゃないよ」

じゃあなんで話しかけてきたんだ? という顔をする雷。

「私たちは迷惑してるんだよ。毎日毎日普段人が通らない道をうろつかれて、うるさくて眠れやしない」
「そういや梟って夜行性だっけ」

とここで真夏がシキョウに話しかける。

「あの〜、この顔見かけませんでした?」

真夏は叶の写真をシキョウに向かって掲げる。

「あ?! あぁ……」
「え?」
「いや、見てない……この辺にはいないんじゃないか」

シキョウは叶の写真を見るなり妙なリアクションをしたが、嘘を付く理由は無いのでおそらく見てはないのだろう。

「あー、話がそれたが……」

シキョウは雷と氷河の方に視線を戻す。

「そこの人間ども、お前ら戦闘術者だろ? お前らが宝探し大会の主催を倒してくれるならいくらか情報を教えてやるぞ」
「なんで上から目線なんだ〜? こいつ」

雷が眉をひそめる。

「物理的に上にいるからなぁ」
「いや、そんなことよりなんで俺たちが戦闘術者だって知ってるんだ?」

学校内のコミュニティなどであいつら戦闘術者らしいぞ、という話が広まることはあるものの、完全に初対面の人に戦闘術者と知られてるほど雷たちは有名人ではない。

「いやー、小規模戦闘術者事務所のホームページとかを巡るのが趣味なんだ」
「うちくらいの術者なんて沢山いるのに良く覚えてたな」

雷が突っ込む。

「春寒の人間が珍しいなーと」
「あぁ、なるほど……」

確かに氷河の名字は国で知らない人はいないレベルだから、覚えててもおかしくはなかった。

「まあそんなわけで! どうだ?」
「うーーーん……」

宝探し大会の情報を得られるなら損はなさそうだなと氷河は思ったがなんか雷が納得していなさそうだ。

「戦闘術者と知って依頼してきてんのにタダでやってもらおうとしてるのが……」
「情報やるって言ってるじゃないか」
「そりゃ、依頼人が必要な情報持ってくるのは当たり前だろ」
「はぁ〜、人間ってケチなんだなぁ」

感心したような声を出すシキョウ。

「もしかして私もお金を払わないといけないんですか……?」

雷たちの会話を聞いて真夏が不安げな顔をする。

「いや、真夏さんは俺が勝手に声かけただけだから……」
「そうですか! 良かったです! 叶さんにまた呆れられるかと……」

一体どういう関係性なんだ?

「仕方ないから金を払ってやるよ、同族の生活の質がかかってるからな……」

シキョウは諦めたように首を振った。

「だが今持ち合わせがないんだ。だから、主催を倒したのを確認したらまとめて払ってやる」
「はぁ~?? 依頼料は前払いなんだが⁇」
「そんなこと言われてもないもんはないんだよなー。私がちゃんと金を払うことを証明できればいいだろう? 誓約書でも書ければいいんだがなぁ」
「ここに紙はないぞ」
「木から作るしかないねぇ」

軽いノリで冗談を言ってくるシキョウに雷は顔をしかめる。
氷河は同族嫌悪か……と思った。

「お金はどこにあるんだ?」

氷河が訊ねた。

「人里の銀行だな」
「へー、思ったより社会的なんだな……」
「梟が社会的で何が悪いんだ。便利なものは使うに決まってんだろ。ほんと人間どもは異種族に対する認識が甘いな」
「すまん」
「じゃあ……」

雷が切り出す。

「君が私たちに同行してもらって、ことが済んだらその足で銀行まで行って金を下ろし、その場で支払う。というのならまあ、依頼を受けて差し上げましょう」
「敬語にしても上から目線が隠せてないぞ~」

2人は本当にソリが合わないようだった。

「ま、それでお前が納得するならそれでいいよ。それに……」

シキョウは真夏の方をちらりと見る。

「なんですか?」
「いんや、なんでも」

4人が出発しようとした時、遠くからドーーーンと地鳴りのような音が聞こえてきた。

「なんだ?」
「戦闘音か……?」

確か叶さんは人間に襲われたとかなんとか。

「……行ってみるか」

日没まであと……何時間?