宝探し大会

天緑山――

「氷河くんち、本当になんでもあるな」

登山用の服に身を包んだ雷がいう。
氷河の両親が用意してくれたものだった。天緑山はファミリー層が休日に登るような高さの山なので、ここまでいらないと氷河は断ろうとしたが、何があるかわからないでしょ! と言いくるめられた。まあ山はナメているとろくなことにならないので素直に言うことを聞いておいたほうがいい。

「あと、魔獣撃退用術珠って……私たちの職業を忘れてないか?」
「うーん、霊力節約用と思っておこう」

術珠とは、中に霊力と術式が込められている珠で、投げて割ることで術を発動できる道具である。初心者や術を使うことが苦手な人向けに道具屋で売っている。
登山口の付近まできて、氷河はふと思ったことを言う。

「そういやさ、宝探し大会ってどうやって参加するんだ?」
「知らん」
「……」

そんなあっけらかんと……

「あの掲示板には書いてなかったのか」
「今T山で宝探し大会やってる〜としか」
「参加した人だれも書き込んでいないのか?」
「過去ログ遡ったら誰かが書いてるかもしれないけど、長く続いてるスレだから面倒くさい」
「はいはい……」

心配は杞憂だった。登山道の入口に近づくと、『宝探し大会』とふにゃふにゃの文字で書かれた看板を持った子供が見えた。

「おっ」
「こんなわかりやすくいるもんなのか……」

その子供はとても山にはそぐわない黒ずくめの服を着ていて、看板とは反対の手に何故か身長の2/3ほどの針を持っていた。そしてか細い声で「宝探し大会……いかがですか……」と言っていた。端から見るとかなり怪しい。雷たちとは反対側から来た家族連れがその子供を見てぎょっとした顔をし、そのままスルーしていった。

「あー、宝探し大会、参加希望なのだが……」

雷が話しかける。

「参加希望?」

子供はちょっとびっくりしたような顔をしていた。そんなに人が集まっていないのか?

「では、ルールの説明をしますね」

ルールと言っても大した話ではなく、山のどこかに宝を隠してあるので、それを見つけたら頂上にある本部へ持っていけという話だった。

「スタッフが宝を確認します……最初に見つけた方には賞金が出ます」
「へ〜」
「宝は持って帰れないのか?」
「あー、……それはもちろん持ち帰れます」

賞金より何より、そこがいちばん重要なところではないのか?
と2人は思ったが黙っておいた。

「……制限時間は暗くなるまでです。夜の山は、危ないので」

そもそも登山道を外れて山を歩き回るのが既に危険なのだが。

「そういえば、その、宝っていうのはどういうものなんだ?」

氷河が子供に聞く。

「……それはもちろん……」
「もちろん?」

子供の視線が一瞬宙を彷徨う。

「見つけてからのお楽しみです……」
「そ、そうか……」

今考えましたみたいな返答に不安を覚えつつ、雷たちは山に入った。