東都、春寒本家――
冴代文珠は朝っぱらから春寒大河に呼び出され、大変不機嫌であった。
「なんだ、クソメガネ」
「うん……1ヶ月前の敬語文珠くんはどこに行ってしまったのかな……」
「お前が敬うに値しないと思ってるからだよ!」
「まあ、僕に対してそういう態度を取る人間は殆どいないから、面白くて良いんだけどね」
大河は文珠を自身の使いっぱしりの戦闘術者として勧誘する際に、思いっきり文珠の地雷を踏み抜いていったため文珠からの当たりがちょっと強かった。とはいえ文珠にもここ以外に居場所がなかったので、文句をいいつつも大河の言うことに従うしかなかった。
「で、早く用を言え」
「うん、今日はね、天緑山に行ってきてほしいんだ」
「……今なんて?」
聞き返した文珠に大河は困った顔をする。
「……文珠くん、前から思っていたんだけど君、耳が悪いの?」
「お前が耳を疑うようなことばっか言うからだよ!」
天緑山は、首都東区の北側にある山である。そしてここは、東都である。普通、東都と首都は日帰りで行き来する場所ではない。
「春寒のとても速いジェット機に乗せてあげるから大丈夫だよ」
「だからっつって……」
「それとも飛行機は嫌いかな」
「いやそういうわけじゃ……」
ここで文珠、はたと気づく。
ここで飛行機は嫌いと言っておいたら公共交通機関に頼らざるを得なくなり日帰りじゃなくなるのでは?!
「いや嘘、やっぱ飛行機は」
「でね、天緑山で何をしてほしいかと言うと……」
時すでに遅し。
「宝探し大会に参加してほしいんだ」
「は?」
思っていたのとだいぶかなり違うことを言われ、文珠は困惑した。
「なに……お前そんな……宝がほしいのか、金持ちなのに……いや宝って何の?」
「別に宝が目的じゃないよ」
大河はふんわりと否定する。
「どうも、『組織』が絡んでいるらしい」
文珠の顔つきが変わった。
組織が絡んでいるなら、仕方がない。
まあ、だからといって当日に知らせてくるのはクソなんだけどな。
