宝探し大会

少し時は遡る——

「馬鹿」

ナーデルが目を覚ましたら眼前にアリーナの顔があった。

「もう少しで死ぬところだったのよ」
「……ごめん。力を使わせた」
「力はまた貯めれば良い」

「お話の最中、失礼しま~す」

背後から急に話しかけられて二人は驚く。

「誰だ?」
「どうも、こんばんわ、夕方ぶり」
「あなたは……」
「直接会話するのははじめてだな。あの時私は後ろにいたから」
「あの6人の中にいた、梟族……」
「シキョウといいますよろしく」

シキョウは丁寧にお辞儀をする。

「一体こんなところまで何の用? この山で宝探し大会はしばらくやらないよ」
「あぁ、それはいいんだ。私はこの山の梟じゃないし」
「……それって一体どういうこと?」
「そんなことよりあんたらに協力してほしいことがあってね」
「協力?」

「そう、我々『組織』に」

「……組織って、あの術者たちが言っていた」
「そうそれ! いやぁ、あいつらは惜しかったんだよな。宝探し大会自体には組織はまーーったく関係ない。だけどこの大会のことはずっと見張っていた。あんたらを捕まえるためにね」
「捕まえる?」

アリーナがカマを構える。

「あぁ、捕まえるったってそんな変なことはしないよ。本当に協力してほしいだけなんだ。組織のために、ね」
「お前たちのことはすぐ倒せる」
「物騒だな〜……そんな顔されたらこっちも戦わざるを得ないじゃないか。ところで今ここには結構な数の組織の戦闘員が待機してるんだけど……どう?」
「数は関係ない。私の能力の対象は一人ではない」
「そうだね。……ところであんたたちは能力によって擬似的に不死身になってるだけで怪我もするし、気絶もするのよね?」
「それがあなたに関係ある?」

シキョウは笑みを浮かべたまま片羽を上げた。アリーナが後ろを見たときにはすでに組織の組員が術を組んでいた。

「あ〜あ、能力がすごくて多少術の心得があっても戦闘の専門家の反応速度には叶わないのにな」

「本当にそれはそうですね」

どこからともなく飛んできた術で組織の組員が吹き飛んだ。

「はぁ……間に合った」
「修堂叶……?!」

シキョウは舌打ちした。
なんでこいつがここにいるんだ。

向こうには顔は知られていなかったはずだし、自分が組織だと勘付かれることはしなかったはず――

「俺は戦闘術者のホームページは開いてないんですよね」
「そんなことから……」

修堂叶の顔と名前は組織の警戒する戦闘術者の一人として組織内である程度周知されている。なので、真夏に写真を見せられたときシキョウは結構驚いた。
そこで本人を見た時に煽りに行ってしまったのはシキョウの悪い癖だ。

「はは、……とはいえなんでお前一人で乗り込んできた? 他の術者はどこいった?」
「組織のことなんて普通の人は知らなくて良いですからね。そんなことより俺にかまけていて良いんですか?」

シキョウが振り向くと、叶が吹き飛ばした組員からエネルギーを吸い、飛行術で飛び上がったアリーナたちに他の組員が飛びかかるところだった。
アリーナがカマで何人か振り払い、払いきれなかった組員は叶が追撃する。

「あなたは……昼間にいた戦闘術者の一人」
「どうも」
「……どうして助けに来てくれたのって訊くのは失礼かもしれないけども」
「俺は、組織の邪魔がしたいだけですよ」
「あなたから吸った力は返すわ。これだけいれば十分なエネルギーが集められるだろうからね」

アリーナは叶に手をかざした。叶は自分の身体がみるみる軽くなるのを感じた。昼間の倦怠感が嘘のようである。これならなんとかなる。

アリーナは組織連中を見渡しながら言う。

「……やれ!」

シキョウが鋭く指示を出すのと同時に戦闘員たちが飛び出した。

「この数は骨が折れそうですが……仕方ないですね」

日が暮れた天緑山に戦闘音が響いた。