下山するにも雷が動けなくて身動きが取れない、もう日没も近い、ということで雷たちは結局野宿する羽目になった。
文珠は「信じられないことに日帰りなんだ……」と、悲壮な顔をして一人で下山していった。流石に同情するしかない。
叶さんは急用を思い出した、ということで真夏を残していくという。
「すみません、本当に申し訳ないんですがこの人連れて下山してください」
「ええ? 急用ってなんですか」
「まあ、仕事ですね。本当はこんな遅くなる筈じゃなかったんで」
氷河は仕事があったのに同行したんだ……と、思ったが口には出さないでおいた。人それぞれ、事情があるだろうからね。
「あ、飯の味だけ保証しますよ。だてにサバイバルしてませんからねその人」
意外なことに、真夏は料理が得意らしかった。
「あぁ、あと、組織の拠点跡地を見たいなら、天緑山につながる川を辿ってみてください、じゃ!」
「お、おう、ご丁寧にどうも……」
そうして慌ただしく去っていった。
「私が足手まといなのはわかりますけど、叶さんどうして一人で行っちゃうんでしょうねー」
「真夏さんも術を鍛えてみては?」
「絶望的にセンスないみたいです」
「……」
「というか……今気づいたんだが……」
雷が苦い顔をして言う。
「あの梟、どこ行きやがったんだ?! 金もらってねーーぞ‼︎」
アリーナが去った後、ドタバタしてる間に気づいたらシキョウはいなくなっていた。
「あぁ、シキョウさんでしたらこれを預かりましたけど」
真夏がメモの破片を取り出す。
「紙あるじゃねーーか」
メモにはこう書かれていた……
『人間どもへ 主催者の片割れ倒せなかったから報酬はなしってことで☆ シキョウ』
雷は紙を握りつぶした。
「依頼料と成功報酬は別だっつーーーの‼︎ というか?! 主催者を倒そうが倒さまいが宝探し大会は終わったから森の生き物たちのQOLを取り戻す目的は達成してるんじゃないのーー?! あぁ、身体に力が入らない……」
「腹を立ててるのはわかったから安静にしていてくれ」
今紙を握りつぶしたせいで明日まで動けなかったらどうするつもりなんだ、と氷河は思った。
氷河たちが持ってきた調理器具を使って真夏は料理を作り始めた。材料はその辺で取ってきた野草ということで、大丈夫なのか不安になったが、一応野草の勉強はしていたらしかった。
出来上がった料理は確かにおいしかった。その辺の野草と少しの調味料でできたとは思えないくらい。
「トレジャーハンターとかじゃなく、レストランでも開いたらどうですか」
「うーん……よく言われるんですけど、レストランって料理作ってればいいわけじゃないじゃないですか?」
「まあ、それは……」
「その点、トレジャーハンターは叶さんくらいにしか迷惑かけないし、気楽なもんですね」
「迷惑かけてるんかい……」
氷河は叶に勝手に親近感を覚えた。
~
「そういえば私思ったんだけどさ」
「なんだ?」
日が沈み、スマホの充電を消耗するわけにもいかず(そもそも電波が悪い)、やることが消滅してそろそろ寝る準備をするか、と寝袋を用意したころ、静かにしていた雷が急に口を開いた。
「やっぱ宝ってなかったんだろうなと」
「そんなロマンのないこと言わないでくださいよ!」
「そういう話じゃなくて……トレジャーハンターさんは黙っててもらって……」
「えー」
「あの2人組の目的は宝じゃなくて……宝を餌にして人を集めることだったんだろう」
インターネットに情報を潜ませておけば、雷のような都市伝説好きや真夏のようなシンプルに宝が欲しい人が多少は釣れる。
「人を集めてどうするんだ?」
「あのアリーナとかいうやつ、生命エネルギーを吸ったって言ってただろう。最初はそれでなんか悪事を企んでるんじゃないかと思ったが」
宝探し大会は何度も開催されている。生命エネルギーとか言うのがどの程度保持できるものなのか謎だし、そもそも悪事を企んでいるなら変な大会なんて大々的に開かずにもっとひそかに計画を進めるだろう。
「だから組織は宝探し大会には絡んでいない。じゃああの2人はなんで生命エネルギーを集めているのか」
「なんでだ?」
「そうしないと生きられないんじゃないか」
「……それってまさか」
ナーデルは雷たちよりも長く生きていると断言した。もちろん見た目と年齢がそぐわない人はその辺にいる。だがそれは雷たちにも当てはまる。断言できるあたりナーデルには絶対的な根拠がある。
「アリーナが奪った生命エネルギーを分けることができるのかはわからないが……一人で保持しているよりも分け与えることもできると考えた方が自然だろうな」
ナーデルは本来寿命で死んでいるはずのところに外から生命エネルギーを注入することで強引に寿命を上乗せされている。つまりエネルギーが尽きたらいつ死んでもおかしくないということで、能力を使いすぎることで体力を失ったら、簡単に死にかける。
そしてナーデルが人間の寿命以上を生きているなら、アリーナも……
「そんなに長く生きて、どうするんだ」
「それは本人たちに聞いてくれよ」
