「お前ら、どういう関係性なんだ?」
雷は術で拘束したままの2人に聞く。
「文珠が私達に声をかけてきたのよ」
「へぇ?」
「お互いがお互いの目的を達成するために同盟が組まれたの。本当は文珠が何を思ってたのかはよくわからない」
「詐欺じゃないのか〜? それ」
「詐欺……ならここまではしてくれないと思うけど」
雷たちはてっきり姉妹が首謀者で文珠が術者として手伝っていたと思っていたがどうも違うらしい。
「不気味だなぁ……戦闘術者やめたてから何してたんだあいつ」
「あ、やっぱ雷あいつのこと知ってたじゃん! 戦闘術者だったのか?」
「全部終わったあと検索すれば出てくるんじゃないかなぁ?」
その会話を聞いた文珠が吐き捨てるように言う。
「戦闘術者になったのは僕の人生で一番の失敗だったな」
「2対1になっちゃったけどどうする〜? 降参するか?」
雷が煽る。
「するわけ無いだろ! この程度どうとでもなる。僕は……天才だからな!」
おぉ、という顔をする雷。
「私みたいなこと言うやつだな〜」
「元? 戦闘術者だけあって腕には自信があるんだな?」
「ひょーがくんやっちゃいなよ」
「は? 俺? お前は?」
「私はー、降参した連中を捕まえとくので忙しいからな!」
「いやいや……」
絶対そんなわけ無いだろ、と氷河は思った。
雷の拘束術は別に常に術者が術を発動させ続けなくたって一定時間は残る。
「お前さー、あいつに結構思うところありそうだけどとどめ刺さなくていいのか?」
「私がやっても仕方ないからなー」
「どういうことだよ……」
雷のやる気がなさそうなので仕方なく氷河は前に出る。
「は? 1人? ナメてるのか?」
「俺は別にナメてないんだがあいつはナメくさってるな……」
「はあ……まあ良いよ。多少実力があろうと所詮金持ちの道楽だろ」
氷河は力が抜けたように笑った。
「は……はは……ナメてんのお前じゃねーか……」
金持ちの道楽でやってるなら氷河はとうに戦闘術者をやめている。
「ひょーがくーん、やっちゃっていいよ〜」
雷の声に振り返ると、部屋の壁を覆うようにバリアが貼られていた。
「お前な……捕まえとくのに忙しいんじゃなかったのか?」
「全面にバリア貼っておけば敵も逃げないだろ〜?」
そういうことか、と氷河は思った。雷は最初から黒夜同盟の連中が氷河を狙ったことに怒っていた。
建物のことを気にしなくていいのなら氷河はもっと自由に戦える。
「まあ、そこまでお膳立てしてくれるならやってやるか」
氷河の後ろから吹雪が巻き上がった。
戦闘術者には当たり前だが術の得意不得意がある。例えば雷は追尾付与などを用いた小回りの効く術が得意だが氷河は遠距離から大技を放つのが得意だった。
「なんだ。お前も遠距離型か」
文珠は複数連なった火の玉を繰り出した。
無論これはただの火の玉ではなくデバフ術が付与されたもので、触れると術が発動する。
氷河の吹雪と文珠の術が衝突し相殺される。
「いや〜、彼の術がデバフ術で良かった」
雷は部屋にバリアを貼りつつ、降参した他の黒夜同盟メンバーも守るようにバリアを貼っていた。
「戦闘術者って当たり前に術を複数同時に使えるものなの?」
英莉が雷に訊く。
「いや、私が天才だからな」
「文珠も同じこと言ってたけど……できるのかな」
「さぁ〜どうだろうね? 彼は現役じゃないし……」
氷河と文珠の術の応酬は続いている。
今のところ氷河の術と文珠の術はお互いに相殺し合い、拮抗しているように見えた。
「いつまでこれをやる気なのか知らないけど君は重大な見落としをしている」
文珠が口を開いた。
「なんだ?」
「さっきからずっと戦っている君と後ろで動いていなかった僕のどちらに分があるかという話だよ」
「ほーん?」
遠距離術が得意な術者同士の撃ち合いは基本的にパワー勝負になりがちだ。
要するに、長い間術に使用する霊力量を維持し続けた方が勝つ。
「そりゃもちろん僕の方が有利だよな?」
文珠はまた火の玉を連射してくる。
「お前ならきっとそう言うと思ってたぜ」
氷河は文珠との距離を一気に詰めた。
「は?!」
「遠距離術が得意な術者は撃ち合い対策にこういう手段を仕込んでおくの、知らなかったか?」
氷河はセレンディアと戦った時と同じようなつららを生成し振りかぶった。
「お前の敗因は――慢心だよ」

